梅雨空
東京は雨降りの一日でした。
ビルの向こうの空はどんより灰色で、これが梅雨です、といった感じの見事な梅雨空でした。
家に帰って、吉本ばななさんの「白河夜船」を読み返しました。角川文庫版の少しくすんだ藤色の表紙が今日の梅雨空のイメージと重なり手に取りました。
ああ、なんだかついさっき目が覚めたばかりみたいで、なにもかもがおそろしいくらいに澄んで美しく見える、本当に、きれいだった。夜をゆくたくさんの人々も、アーケードに連なるちょうちんの明かりも、少し涼しい風の中に立ち、待ち遠しそうに真上を見ている彼の額の線も(吉本ばなな著「白河夜船」より)昼間の明るさがざわざわとまぶしすぎて、あたりが暗くなり始めるとほっとする時期がありました。大学生の頃のことです。
暗くなると落ち着くものの、夜になると夜の長さが怖くて、夜が明け始めるとほっとしていました。この本を読むとあの頃の夜を思い出します。