りんご飴の気持ち
ぽってりつややかで
なまめかしい紅色にそそられ
やさしく口に含む。
あまい
とろけそう
思わず歯を立てたら
痛っ
そう簡単に
ガードは開かない
生半可なひとくちは怪我のもと
極上の身の柔らかさに到達するか
歯が折れて怪我をするかは
覚悟次第
大人の恋はりんご飴
物静かでこころやさしいスープ
あなたの主成分検査って、試されたことがあるでしょうか。
ちょっと前にフェイスブックで流行ったような気がします。
「あなたは90%のやさしさと10%の腹黒さでできています」
みたいなやつです。
以下の本に掲載されている「野菜たっぷりスープストック」を主成分検査をしたら
「物静かさとこころ優しさ、芯の強さからできているでしょう」
と私なら診断します。
「菩薩のようなやさしさはみんなから愛されるでしょう」
と付け加えてもいいかもしれません。
この「野菜たっぷりスープストック」には、ベーコンやウィンナーなど手っ取り早くコクや旨味のもとになるものは入りません。
材料は、キャベツ、セロリ、玉ねぎ、にんじんなどの野菜たっぷりと香味野菜のみ。
潔い!
でも、コクは足りないかも?と失礼ながら予想して食べたのですが、
「え?」
誇張なく、絶句しました。
旨味もコクもたっぷり。味の深みはセロリとローリエかな。
滋味深く、やさしさに満ちたスープでした。
食べるタイミングを間違えていたら、
このスープの懐の深さに涙したかもしれません。
想像ですが。
わたしの定番のスープになりました。
スパイシーな夕方
夕方、思い立って公園へ。
日が暮れ始めたのにまだ暑くて
改めてもう夏なんだなぁと思う。
あっという間に梅雨があけて、
ひざかっくんされたまま
よろよろと暑さにさらされている感じ。
暑さにやられてベンチでひと息ついていたら
公園内の施設の閉館を告げる音楽がながれはじめた。
20年こんなに近くに住んでいたのに知らなかった。
どんなに近くにいても、
近いというだけで
知ることにはならないんですね。
興味を持たなければ。
わたしは知る努力をしなかった。
その時間帯に公園をぶらぶらする機会がなかった
といえばそれまでなんですが。
会社の人間も
毎日顔を合わせて同じ空間にいて
知っているような気持ちだけれど
話しかけた時の顔
話す話題
仕事をしている時の顔
見えているほんの一部しか知らず
その一部で見えていないところも
都合よく
というか
自分が想像しやすいように想像していた
それだけに過ぎないのでは
と思った。
だからって
嫌な人を好きになることはないですけど。
ベンチのすぐ目の前の池
あんなにスイスイ泳いでいたあめんぼが
いつのまにかいなくなった
閉館の音楽が流れたから?
あめんぼってそういえば
どんな顔してたっけ
知っているようで
全然知らないものが
ここにもひとつ
公園の入り口で買ったマサラチャイ550円分の夕方
いい時間でした
なすの素揚げ(完全版)
この本を読んでから、なすの素揚げの作り方にもう迷わなくなりました。
なすの切り方、油の温度、揚げる時間、何度作ってもぴたっと決まります。
油をべったり塗ったような、油まみれのなすじゃないんです!とろりとしたなすの美味しさにうっとりします。
レシピに頼りすぎず、楽に料理を作れるようになりましょう、五感を使ってね、という本なので細かな分量などは書いてありません。でも、料理って自由でクリエイティブで楽しいなと、読んだあときっとワクワクすると思います。
鳩
森の中のカフェでテイクアウトした
フローズンバナナミルクセーキ
汗だくでちゅるーっと飲んだら
胸がカキーンと一気に凍る
いたたたたた
冷えすぎて
痛すぎ
そう言って
顔を見合わせた
紙製のカップホルダー
次に持参すると
小さなおかしをプレゼント
店先の黒板にそう書いてある
へーまた今度来るときに持ってこようか
何気なくそう言った
今日の続きが当たり前にくると思って
ピカピカに晴れていたあの公園で
池の水面が
木漏れ日が
ボートに乗るカップルが
何もかもがキラキラしていたあのとき
今日の続きが今日と同じじゃないなんて
想像できなかった
バナナミルクセーキください
フローズンのほう
ベンチに座って
ちゅーっと飲んだら
また胸がカキーンと痛くなった
いたたたた
つぶやいてみる
カップホルダーを持参して
もらったおかし
ちいさなパイひとつ
手を広げたら
握りしめてぐちゃぐちゃになってた
ベンチの前に
目の前をつつつといったり行ったり来たりする
鳩が2匹
かゆいのか
頭をつんつんし合ってる
仲よし
カップルかな
ぐちゃぐちゃのパイを
パリパリに砕いて
地面に落とす
足で踏み潰してさらに細かくくだく
つつつつと鳩がやってきて
もう一匹もやってきて
つんつん つんつん 食べはじめた
上手につんつんして
食べている
その脇からちいさなアリが
こっそりやってきて
ちいさなカケラを体にのせて
すたたたと巣穴に向かう
その横から大きなアリがのそのそやってきた
おこぼれをいただきに
かなしみでずたずたにつぶれたパイは
鳩とアリをハッピーにした
私の悲しみはだれかのしあわせ
そんなふうに時間は絡み合う
パイが空から降ってくるなんて
あの鳩は
1分前には
きっと想像もしなかっただろうに
つんつん つんつん いつものように
土をつんつんしていて
あー首痛いなぁ
いつまで何もないところ
つんつんしなきゃあかんねん
いい加減にしてほしいわぁ
なんて思っていた
いつものこの時間のすぐ先に
大きなサプライズが待っているなんて
気まぐれなしあわせが降ってくるなんて
知るわけないよね
私の悲しみの先にも
悲しみしか続かないなんて
誰にもわからない
この先があるのかすら
知るわけがない
鳩のように つんつんつんつん 飽きずにしてたら
ひょっとして
気まぐれな何かが降ってくる
かもね
どんな苦しい生活にも、美しい光が灯っている
この日々の暮らし。
この小さな生活。
昨日の一日。
今日の一日。
暮らしながら、
わたしたちはほとんど気がつかないでいる。
どんなささやかな暮らしにも、
苦しみや悲しみが混じった生活にも、
その片隅で美しい光が灯っていることに。
それが消えずに、
わたしたちの暮らしを照らしていることに。
(『ヴィトゲンシュタイン 世界が変わる言葉』より)
たとえばこんな場合。
ある難病から肺炎を患い、1年以上病院のベッドで寝たきりだった父。数本の管によって命をながらえ、シモの世話をしてもらい、固く目を閉じ見舞いにきた家族を見ることもなく静寂の中で一日を過ごしていた父。ささやかというよりも、かすかにこの世界に引き止められていた父のあの暮らしの片隅に、美しい光が灯っていたのだろうか。1秒でも長くこの世にとどまることが父にとって光だったのだろうか。
たとえその1秒が苦しみでしかないとしても?
どれだけ想像してもこたえがわからない。
もう一度ヴィトゲンシュタインの言葉を読み直す。「苦しみや悲しみが混じった生活」とある。
あぁ、これは苦しみや悲しみがすぐそこにあったとしても基本は幸せや喜びも感じることができる人を対象に語りかけているのかもしれない。たぶんわたしの父のような状態は含まれないんだろう。
わたしの小さな頭ではその程度の理解で精一杯。
もしそうだとするなら、翻ってわたしの場合。
基本毎日つらいです。
寝る直前まで苦しんでいます。四六時中そのことが頭から離れないせいか、毎朝3時ごろパッと目がさめるので、3時間の睡眠時間以外はその苦しみがずっと頭の中に居座り、あちこちカジカジ蝕んでいます。
あまりに苦しくて昨日公園を散歩しました。
風が強い日で、髪の毛をごしゃごしゃにされながら台風の影響だっけなどと考えながら薄暗い気持ちのまま歩いていたのですが、ふと池を見るとそれまで静かだった水面が、一気に吹きつけた風の勢いで水紋が向こう岸までさわさわさわーっと広がったのです。水中からぞわぞわと何か生き物が出てくるように錯覚し、鳥肌が立ちました。少し怖かった瞬間ですが、美しい一瞬でもありました。
多分そういうことなのかな。
こんなご褒美もたまにあるわけだから、ね、希望をつないでいきましょうよ、また美しいものを見るために。
ということなんでしょうか。
ちなみに、思わずとった池の写真はこちら。
<風が吹く前>
<風が吹いたあと>
とっておきの一冊
今日の晩御飯は、週末に作りおきしていた「豚のひき肉炒め」を使って、「季節野菜のドライカレー」を作りました。参考にしたのは、「暮しの手帖社 | 暮しの手帖別冊 毎日がつながる献立」。
ドライカレーといえば、みじん切りの野菜が入ったスパイシーなひき肉、という、どちらかといえばひき肉が主役のイメージでしたが、有元葉子さんのこのレシピは、なす、きゅうり、紫玉ねぎ、ミニトマトのひき肉あえといった感じで、野菜が主役。なすのとろりとした食感、玉ねぎときゅうりのシャキシャキ感、トマトのみずみずしさと、野菜の食感がとてもおいしい。シャキシャキ玉ねぎの秘密は、細く1㎝幅に切った玉ねぎを塩もみしてしばらく放置した後、さっと炒め合わせるから。塩もみするので、食感がなくなるまで念入りに炒めなくても辛味がありません。野菜の美味しさは食感だと私は思いますが、まさに食感の妙に虜になりました。夏にぴったりの元気になる一皿でした。
ガス台の近くに置いてページを少し燃やしてしまったり、水に濡れた台所で開きっぱなしのため水濡れでふにゃふにゃにしたりと手荒に扱ってはいますが、この本は私にとって宝物です。もうこの本なしでは生きていけません。本棚1本に収まりきれないほどの料理本を所有していますが、いつも手にするのはこの本です。本のタイトル通り、日々の献立をつなげるヒントがたくさん盛り込まれています。
余談ですが、この本の表紙を見たとき、「あ、もしかして?」と思い、スタイリングした方のお名前を探したところ、やはり高橋みどりさんでした。高橋さんは料理を演出するフードスタイリストとして活躍なさっている方で、多くの料理本のスタイリングを担当されています。高橋さんが選ぶうつわは、主張しすぎず料理を美しく引き立てるので、どの料理も「うふふふふ」と嬉しそうに見えます。一つ一つのうつわはシンプルな印象ですが、組み合わせて使うことでバランス良くお互いを引き立て、とても印象的なたたずまいになります。素材や、色、形の組み合わせ方が絶妙なのです。うつわ好きの観点からも魅力的な一冊です。