伝書鳩
仕事しているし、これくらいいいよね。
ではなく、仕事してるから、これはやめておこう。
命を削って働いているから。
毎朝きっちり起きて、満員電車にもみくちゃにされ朝から絶望を味わい、仕事してる家に帰ってくる。伝書鳩みたいだ。
届ける手紙はそれぞれ違っても行って帰る毎日。囚われていると感じる。
満員電車の窓から見える自由とすれ違いながら、私は目的地へ行く。
自由をぽろぽろこぼしながら伝書鳩は今日も手紙を届ける
あの自由と引き換えに今お財布に入っている数枚のお札。部屋を見渡すと、あちこちにうっすら埃をかぶったままの雑貨や本がごちゃごちゃいろいろ。
そして思う。
働いたからこれくらいいいよねはまったく逆で、働いたからこれくらいがまんできるよね、がわたしにはしっくりくる。
あんなに犠牲を払って得たんだもの、大事にしたい。将来のためとか節約とか抜きにして、毎日味わう伝書鳩の世捨て感の対価としてこれを得るのはふさわしいのか、そう考えながらお金を使おうと最近思うようになった。
年をとって守りにはいったのか。