鳩
森の中のカフェでテイクアウトした
フローズンバナナミルクセーキ
汗だくでちゅるーっと飲んだら
胸がカキーンと一気に凍る
いたたたたた
冷えすぎて
痛すぎ
そう言って
顔を見合わせた
紙製のカップホルダー
次に持参すると
小さなおかしをプレゼント
店先の黒板にそう書いてある
へーまた今度来るときに持ってこようか
何気なくそう言った
今日の続きが当たり前にくると思って
ピカピカに晴れていたあの公園で
池の水面が
木漏れ日が
ボートに乗るカップルが
何もかもがキラキラしていたあのとき
今日の続きが今日と同じじゃないなんて
想像できなかった
バナナミルクセーキください
フローズンのほう
ベンチに座って
ちゅーっと飲んだら
また胸がカキーンと痛くなった
いたたたた
つぶやいてみる
カップホルダーを持参して
もらったおかし
ちいさなパイひとつ
手を広げたら
握りしめてぐちゃぐちゃになってた
ベンチの前に
目の前をつつつといったり行ったり来たりする
鳩が2匹
かゆいのか
頭をつんつんし合ってる
仲よし
カップルかな
ぐちゃぐちゃのパイを
パリパリに砕いて
地面に落とす
足で踏み潰してさらに細かくくだく
つつつつと鳩がやってきて
もう一匹もやってきて
つんつん つんつん 食べはじめた
上手につんつんして
食べている
その脇からちいさなアリが
こっそりやってきて
ちいさなカケラを体にのせて
すたたたと巣穴に向かう
その横から大きなアリがのそのそやってきた
おこぼれをいただきに
かなしみでずたずたにつぶれたパイは
鳩とアリをハッピーにした
私の悲しみはだれかのしあわせ
そんなふうに時間は絡み合う
パイが空から降ってくるなんて
あの鳩は
1分前には
きっと想像もしなかっただろうに
つんつん つんつん いつものように
土をつんつんしていて
あー首痛いなぁ
いつまで何もないところ
つんつんしなきゃあかんねん
いい加減にしてほしいわぁ
なんて思っていた
いつものこの時間のすぐ先に
大きなサプライズが待っているなんて
気まぐれなしあわせが降ってくるなんて
知るわけないよね
私の悲しみの先にも
悲しみしか続かないなんて
誰にもわからない
この先があるのかすら
知るわけがない
鳩のように つんつんつんつん 飽きずにしてたら
ひょっとして
気まぐれな何かが降ってくる
かもね